燃えつきた地図 安部公房

白だと思えば、白く見え、黒だと思えば、黒にも見える、乾ききった高速道路の舗装の上・・・制限速度を十キロ越えた、約九十キロ・・・扇風機の羽に、針金をつっこんだような音をたてて、エンジンが鳴り、絆創膏を引き剥がすような音をたてて、タイヤが鳴る・・・ぼくはもう、体の芯まで、とっぷりと騒音の中にひたされて、何も聞えず、かえって静寂のなかにいるようだ・・・目にうつるものも、ただ空にまっすぐ突き刺さっている、コンクリートの道路だけ・・・いや、これは道路ではなくて、流れる時間の帯である・・・僕は見ているのではなく、ただ時間を感じているだけなのだ・・・

上記、高速道路を走るときの描写を引用。なんだこのかっこよさは。