台風を捕まえる

老師と友達と旅に出ていた.北へ向かう旅だ.老師は台風を捕まえるマスターで,僕はその弟子だ.おそらく弟子の中でもトップクラスの実力を持つ.なぜなら,これから超大型台風を捕まえる旅に,僕を連れてきているからだ.というか,僕が捕まえるからだ.老師はお目付け役というか,事を見届ける役回りというか,そんなところ.友達は特に目的はないらしい.ただの旅行気分で付いてきている.僕と老師らの目的は知っているが,そんなことお構い無しに,東北への旅を楽しんでいるのだ.場違いもはなはだしいのだけれど,老師と僕だけでも道中楽しくはないので,それは助かってもいた.
場面が切り替わり,もう台風を捕まえている最中だった.台風は大玉転がしみたいにして捕まえるらしい.なんかすごい気流の流れを丸めて転がす.丸めながら走り転がす.さすがに超大型台風ともなると,一筋縄ではいかなく,すごい抵抗してくる.玉も壁のごとく巨大だ.だけれども,そこは老師に認められた実力の持ち主である僕.なんとか踏んばり,どんどん丸めていく.
とうとう台風は力尽き,最後の最後までやっつけきった.どうやっつけたかというと,最後は体育の授業で使ったマットを半分に畳む動作.あの動作でフィニッシュだった.台風はいまや玉ではなく,板状になっていた.というか,もうまんま体育のマットになってた.持ち上げて,エイッ,...バタン.勝った...!みなが笑顔で駆け寄ってくる.老師も満足げな表情で「ギネス記録じゃ!おまえが世界一じゃ!」とはやし立てる.老師,ギネスって.もうちょっと風格のある言葉を選んでほしいなぁ,とか思った.