鏡の中の鏡

こいつはおもしろすぎる。

めっちゃくちゃに疲れて電車に乗って「やべー疲れたー眠いー寝るー」と思っていても、これを読み出すと疲れを意識しなくなくなるくらいの、超ナイス。新しい漫画を読めばこの状態にはすぐに入り込めるんだけど、漫画より少し頭を使ってしまう小説では、この状態になれることはあんまりない。ので、めちゃくちゃにおもしろいってことが自分の体で証明されたってわけだ。

短編が少しだけ、本当に少しだけつながってる感じの連作短編集なんだけど、この短編一つ一つがすごいおもしろい。この短編は、主人公の説明も状況の説明もたいしてされずに、おもむろにいきなり物語に放り込まれるタイプで、その不条理感がとても夢に似ていて、そして、夢がすごい好きな僕としては、夢をそのまま文章に起こしたようなその感じにやられてしまうのだ。不条理でいながら、なにかを暗示していそうで、けどそれがまたわずかにしか示されていなく、こちらの取りようによって物語の真の意味がなんとでもなるってな具合が、エンデやるなあって感じである。さすが。
というか、大胆に予想してしまうと、エンデの物語はその着想を夢から得ているに違いない。夢の大家と自分で思ってる自分としてはめっちゃそう思う。あの、さも自分で体験してきたような書きぶり、旅行記のように事実をただ書き表していくような文章は、夢というバーチャルリアリティで意味不明の世界を味わってなければかけない変なリアルさだ。(翻訳でどこまで変わっているかはしらんけど)
旅行記物のどっかに行ってきたようにさせてくれる感満載で、しかもありえないファンタジーを味わあせてくれるこの小説は、何回でも読み直せる、読み直したいと思わせる、最強本である。読んで損はないどころじゃない。得しかない。読もう!!