学園祭

学園祭でバーをやることになった。クラスの出し物ではなくてなにかのクラブかサークルでの出し物だった。バーと言いつつも学生なのであまりバーの雰囲気を出せておらず、ただのイタリアンな感じの内装になっていた。緑のテーブルに白いテーブルクロスをしき、ウェイターは黒ズボン白シャツみたいな感じ。あと赤いなんかでトリコロールカラーを出してたような気がする。
昼から店は開いていて13:00まではレストランとしてパスタやハンバーグなどの洋食レストランとしてご飯ものを出していた。ぱらぱらと客が来てなんとなく注文を聞きさばいていったが、評判がよいのかやたら混んできた。さらに13:00をすぎてもまだ客がやってきて飯作れと要求してくる。子供連れとかいて店の前の食品サンプル(いつの間にこんなそろえたんだ?ってくらい立派にそろえていた。でかいガラスケースに20個ほど食品サンプルが並んでいた)見て「あーあー。食べたかったのになぁ」などと泣きそうになっている。これを見てこちらも負けてしまい、部長が先生に聞きに行ってちょっとだけ時間を延長することにした。
時間を延長したのはいいのだが、とにかく店の混雑具合がひどい、客対応が悪すぎる。ざっとみて、水が出ていない、食器が片付いていない、食後のコーヒーが出ていない、入り口の客が案内を待って立ち往生している、注文を聞けていない、注文が来ない、などの事態になっていて、飲食業としては致命的な状態になっていた。お客さんもおこりだしていた。バーでバイトをしていた経験があるので、僕がなんとかしなくてはとやっきになって客をさばいて行ったが、さすがに客の量が多すぎて事態は特に収まらなかった。店の練習とか適当にやってたときに、みんなに基本をちゃんと教えときゃよかった、と悔やんだりした。
僕らの店がいったん落ち着いたので、今度は僕らが昼飯を食べにいくことになった。ほかのサークルかなにかが出しているスパゲッティ屋に行くことにした。スパゲッティ屋もやたらこんでいて満席レベル。なんとか運良く座れたのでメニューからあんまり失敗がなさそうなトマト系のスパゲッティを注文した。適当に話しているといっしょにいった人の注文が来た。「トマト系でそんなに時間かからなそうなのに俺のは遅いなー。まー学園祭だしそんなに怒りませんけど」とか思っていると、みんなが食べ終わってしまった。これは怒る。店の人捕まえて問いつめると、異常になめた態度をとられる。「あーそう、ふーんそりゃ大変だねー、で、どうします?食べます?」とか。さすがにぶち切れてみたらちょっとだけ恐縮して偉い人を呼びに行った。出てくる偉い人(といっても、学園祭なので別のクラスの友達)が注文を聞く。「エビ入ってるのないの?あ、エビってか魚介類っぽいの食いたい」となんかさっきのとは違うものを頼んでみた。すると偉い人(友達)はメニューに載っていた料理名と味の感じの表を参照して「そうですね。この表から判断するとライオンってやつがいいと思いますね」と言ってきた。表があるなら先に言えよと思いつつ、ライオンなるメニューを注文した。ついでになんで僕の注文だけこないのか聞いたら「シェフ呼んでこようか。鳴沢先輩」「え?なんて言った」「鳴沢先輩ったら鳴沢先輩だよ。奥さんと作ってるの。」「聞き取れなかっただけだよ。鳴沢先輩は分かるよ」と身のないやりとりになった。テンションがあがってきたのかだんだん話している友達の声が大きくなってきた。なんだなんだ怖えななんだ、と思ってたらなんか店の放送で「なんとかさん。声が大きいです。私語はつつしんでください。」と怒られていた。
再度注文が来るのを待っていると、一緒に来た友達がみんなに伝えたいことがあるんだと話を切り出した。「俺、サッカーキック胸にくらっちゃって、XXXXXXXが壊れたらしいんだ。」別の友達がそれを聞いてびっくりして「まじで。XXXXXって抗体のところじゃん、やべえじゃん」と言っていた。僕にはXXXXXがどれだけ大事な部分なのか分からなかったけれど、みなの雰囲気から判断するとすごい大事な抗体を作り出している器官で、そこが壊れたってことはけっこう致命的なことっぽい。だれも口にださないけれど、死に近づいたことは間違いなさそうだった。