どっかの国の王子。双子の女の子の兄弟がいたが戦争かなにかで死んでいる。自分の城の中にまで攻め込まれ、目の前で殺された。自分はどうにか逃げ延びて世界じゅうをあてもなく旅している。

海に浮かぶように作られた自転車にのって暗い夜の海を少しずつ進む。この世界ではポピュラーな乗り物らしい。漕ぐとライトが点くのがよい。暗い海を一人ぼっちで明りも無しでいったら心細さでどうにかなってしまいそうだからだ。前に見えるビル群のある島に向かい少しずつ進む。

島に着いた。検問があるらしい。海にも道路交通法みたいなものがあるのだろう。切符を買っておいて海を渡らなくてはいけなかったらしい。素直に海から自転車でやってきて切符を持ってないことを告げる。ふーん、と興味のなさそうな顔でじろじろ見られる。とりあえず島の名を尋ねる。「冗談で言ってるんだよな?」「え?」「ここは監獄島だよ。第39監獄島。おい、とりあえず連れてけ。」坊主頭の男がでてきて連れて行かれる。どうせ何かの手違いだと思いしたがっておく。歩く間にその坊主頭の男に生い立ちなどを喋り仲良くなる。「それじゃあお前はどっかの国の王子なんだな。」「うん。そう。いまやただの落ちぶれた人だけどね。」僕が自嘲気味に言うと「・・・だめなんだ。お前は英雄じゃなきゃ・・・あんたみたいな人は英雄じゃなきゃ・・・そうじゃなくて、どうして俺の妹はそういった人のために命を投げ出したんだ・・・」とぶつぶつ呟いている。どうやらこの人の妹は城に仕えていて、戦争で「あ、危ない!!」というような場面で王族の身代わりに死んでしまったらしい。というか、僕の国に攻め込んだ国のようだ。なにか縁のようなものを感じる。


「しかし、お前は悲しくないのか?」
「なにが?」
「双子の片割れのことだよ。死んだんだろ?」


とたんに全身に悲しみが行き渡る。体が震えだし止らない。「うあああぁぁぁ・・・・ぐがぁうぅぅぅぅ・・悲しく・・・・ないわけ・・・・ないだろう・・だって・・・・だって・・・もう、会えないじゃないかぁぁぁぁぁぁ・・・・うあぁぁぁぁ・・・うぐぁぁあぁぁあぁぁ・・・」よく分からない嗚咽を漏らし、これ以上泣けないというくらいに泣いた。旅の忙しさで忘れようと、意識しまいと無意識のうちに押さえつけてたものが一気に押し寄せたのだろう。歩けないくらいに体力を消耗した。

とりあえず椅子を勧められ座らされる。坊主頭の職場らしい。なにか親方らしき人が出てきて「力になってやるよ」とか言われる。この島から逃げ出す手はずを整えてくれるらしい。ありがたい。



たぶんゲド戦記イメージ。