ポストで恨みを買う

とある所用で手紙を出しにポストに向かったけれど、前を行くチャリンコもどうやら同じルート同じ目的。あからさまになんらかの書面をポストイットしようと目論んでいる。後ろに赤いヘルメットかぶった子供を乗せているチャリは、予想通り僕の目指していたポストで停まり、母親だろう女性はカバンから手紙を取り出した。僕はというと、あほ面をさげて彼女らの後ろに停まって順番を待った。あまり見慣れない光景。しなれない待ち時間に自分でも戸惑う。
ここで母親がまさに左側の口に手紙を入れようとするときに


「わたしがいれるー」


と子供がまったくの子供らしいやってみたさ・大人の真似したさを前面に押し出し、親ならずとも顔がほころぶというところ。が、


「後ろ待ってるでしょ。だーめ。」


カシャン


「はい。どうぞ。」


と、僕にすみやかに順番を回してしまった。
嗚呼。これは。いけない。たぶん・・・これは・・・と子供の顔を見てみると、すごい無表情で僕を見ていた。怒るわけでもなく、泣くわけでもなく、すごい無表情。怒ってないのかなと思って見ようにも、そんなことを思わしてくれるほど甘くなく、ずっと無表情で僕を見続けている。僕が手紙を入れるさまをずっと穴の空くほど。たぶんすげーむかついてたんだろう。
あーあ、勝手に恨みを買い、弁解の余地もないってのはやるせねぇ。母をうらめ母を。俺は無実だ。