みかんは最高だ。冬の俺たちの冷え切った心を暖めて、すかさずちょっぴりその酸味で引き締めてくれる。年上の近所のおねえさん的ですらある。ときにあまく、ときにすっぱく。癒しである。今日もダンボール箱から一つを取り出し、その橙色の果実をあじわっていた。食物繊維も取れるし、ビタミンも入ってそうだし、やっぱりさいk

ガリッ!


なんだ…これは…?おれはみかんを食べていたのではなかったのか?
湧き上がる不安。
ぽんかんではなかったはずだ。
言い知れぬ疑惑。
認めたくはない。認めたくはないが、口の中に残るいやな青臭さがそれを如実に物語っている。

種だ。

なぜ、なぜみかんに種が入っているのだ。人間が英知をかけて品種改良し、その身から繁殖のための機能を取り除いたその身に、なぜ。
…そうか、これが年上のこわさってやつかい。伊達に年食っちゃいねぇとはよく言うが…。経験の差がこんな形であらわれるとはな…。おそれいったぜ…。
つぶやき、口に残った、砕けた種の破片をはき捨てるように吐き捨て、また青年は次のみかんに手をのばすのだった。またいつ裏切れるともしれない、その甘い果実を…。