雷雨の日に家のベランダから外を見ていた.家は11階なので遠くまで見渡せる.周りには地元の友達たちが6人くらいいて,みんなで雷を探していた.
東京全土を覆うくらいの巨大な雷雲らしく,どこをみわたしてもけっこう雷が鳴っていた.その中でもよく雷が落ちるところを探して皆で押しえあう.僕は自分の家という謎の責任感からか,よいところを探してはみなに教えるのにやっきになっていた.「あの緑色のホテルの左側の海らへんがすごいよ」「どこ?」「ほらあそこの.その角度じゃ見えないかも.こっちきて」「おお,あれか.おーすげ

ズギャーン

頭上でものすごい雷が鳴った.もしかすると家のマンションに落ちているのかもしれない.ほんとうに天変地異としか思えない雷で,およそ10秒くらい稲光が走っていた.光の線もそれぞれ太く,頭上がまっしろになったくらいのレベル.みなベランダから身を乗り出して空を見上げ,かっけーとか言ってテンション上がってたけど,少しの怖れが見えた.僕も雷が異常にすきだけど,単純に喜ぶわけにはいかなかった.一瞬死んだかと思った.
この巨大な雷が終わってみんなが呆然としていると誰かの声が響いた.「虹だ!」急いで眼をそっちにやる.真正面の空に虹が出ていた.通常の虹とは違って地面と平行に真一文字に空を2分している.僕は「まだ,東京中に雷雲がかかっているので,太陽がないと出ないはずの虹が出るのはおかしい.さっきの雷と連動していきなり出たので,さすがにこれは異常だ,この世の終りか,UFOかな」とか思ってた.だけど,雷と虹が同居している景色は,かっこよかった.

なぜかいつの間にかベランダの外ギリギリまでが水になっていた.海がここまできたのかと思ったけど,波はないみたいだった.真水か海水かも分からないけど,みなが騒いでないし,驚くほどのことでもないのかもしれない.
水の上に左から波紋がきた.なんか,左側の水に大きな石をぶっこんだ時にできる感じの輪ができてる.なにか大きめの物が落ちたのかもしれない.いくつもの10センチ程度の波が,輪を広げて迫ってくるのは面白かった.さらに,頭上には雷が鳴っているにもかかわらず月が出ていて,それが水に映って波に揺られ,神秘的な情景となっていた.が,そこになぜかアヒルと白鳥が合わせてが6羽くらい,水の上をすいすいやってきた.がぁがぁ,ぎょえぎょえ.雰囲気はぶち壊された.みんな怒ってそれらがきたほうを見た.すると,そこには友達の一人がやべえという顔をして立っていた.「白鳥とか・・・いたらかっこいいかと・・・思って...さ」その声のトーンから自分でも良くなかったしみんなにも悪いと思っていそうだった.鳥たちはひとしきり輪の中心のところで潜ったりしてなんか食ってを続けた後,ベランダに上がってきた.びしゃびしゃだし,動物臭だし,うんこしだしたし,つついてくるし,最悪だった.